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「伝えること」建築論@慶応大学

10/31、慶応大学で「建築論」の講義。
この講義では毎回サブテーマを設けて、建築という複合的で総合的な総体を因数分解して「横断的に考えること」を伝えたいと思っている。

五回目になる先日の講義のサブテーマは「歴史」。歴史自体も膨大な情報の集積なので、詳細を網羅するのではなく、いくつかの鋭利な切断面を示すことで、建築に携わっている者でもおぼろげにしか把握していない「つながり」を切り出して見せたつもり。
もうひとつ伝えたかったのは現代に生きる僕たちが持つべき歴史への姿勢で、それは一言で言えば「動態としての歴史」ということ。いま、そしてこれから20年くらいに起きることは、100年後の人々から見れば歴史になるはず、という捉え方。

講義というのは、演習と違ってこちらが一方的にしゃべるので、メッセージが伝わっているのかどうかわからないところが物足りないけど、毎回講義が終わるとひとりふたり話しかけてくれる学生がいて、まぁ、それなりに伝わっているのだろう、ということがわかる。

また、講義資料をパワーポイントなどでしっかり作り込まないようにしている。紙に鉛筆で手書きで書く。これは「その場で講義を生成する」状態にしたいからで、そのほうがパワポで作り込んだ資料よりも伝わることが多いと思うから。マーシャル・マクルーハンいわく、メッセージは、その内容の密度や精度によるだけではなく、話し言葉の「音」、手書きの文字やスケッチが描かれる手の「動き」、手書き文字の揺らぎや話し手の身振り手振りといった「視覚情報」、といった、メッセージの媒体=乗り物=手段によって変化するんだ。
学生が熱心に聞いていればこっちも乗ってきて、用意していなかったこと、想定以上のことにも論が及ぶ。

一見完成された講義やレクチャーというものは、情報の密度が濃く送出されてはいるけれど、せっかくのメッセージを聞き手の側で処理し切れていない可能性があると思う。
「伝達性」とは、送出側の情報の確かさ深さに加え、伝達する「媒体経路の豊かさ」、受け手の脳の「活性度」が必要なのではないか。

言うは安し、行うは難し。
まだまだ研鑽の余地アリ。


[ben]

by ben_matsuno | 2007-11-04 19:50 | 考えたこと


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